引き続き、山中漆器アーティストの田中瑛子氏にご協力いただき、先程のFUZONから場所をギャラリーサロン漏刻へ移動して漆部屋で塗師としての作業工程を見せていただきました。
1.漆を塗る前に
~濾すひと手間~
漆の木の樹液である漆は、採取や精製の際に入ったゴミや前回の作業後に硬化してしまったところなどを取り除くために、塗る前には必ず漆を濾(こ)す作業をします。
フィルターの役割をなす専用の紙に絞り出し、包んだあと捻じりながら濾します。
色は最初は乳白色ですが、酸素に触れて硬化が始まると琥珀色に変化します。
2.拭漆技法①
~塗っては拭いて~
漆はかぶれやすいので手袋をはめ、同じく専用の紙をスタンプ状に丸めたもので作品に薄く均等に塗っていきます。
「多少指紋がついてしまっても、その後紙で軽く拭き取るのでなんとかなる」
と笑う田中氏。
その分、均一に拭き取る技術はさぞ高度なのではと喉がなりました。
そう、田中氏は拭漆技法で作品を生み出すアーティストなのです。
ちなみに山中塗にはこの他、「きゅう漆技法」もあるそうです。
全国の漆芸でも見られるこのきゅう漆は、漆塗りを施すこと全般を指し、主にハケを使って不透明な漆を塗り重ねるため木目が見えないほどに艷やかに仕上がります。
こちらの世界も機会があれば是非覗いてみたいものですが、山中ではその加飾技術から木の美しさを特徴としていることもあり、木目が美しく表現できる拭漆技法が発展しました。
3.拭漆技法②
~乾かしては、塗り重ねながら研ぎ上げる~
漆を塗ったら、乾かすために温度計を設置した棚の中で埃がつかないように保管します。
冬場はヒーターをはわせ、じわ~っと乾かします。平均で乾かすのには1日かかるとのこと。
ちなみに先程触れたきゅう漆の職人だと、拭き取る工程がない分、埃には細心の注意を払わねばなりません。中には、漆部屋に入ってから埃が収まるまで1時間待つ方もいるとのことで驚きです。
とかく、田中氏に何回くらい塗り重ねるのか伺うと、以下の写真でいうなら左奥は4回くらい。中央手前のもので10数回はのぼるそう。
漆を数回塗り重ねると、せっかく塗った漆面を研いでしまいます。
木肌に絶妙に漆が残っている状態まで研ぎ、またそこに漆を重ねます。
この工程を数回繰り返す間、サンドペーパーの粗さをどんどん細かくしていきます。
400番から最終的には2,000番近くまで。
少しずつ木肌を研磨しながら漆を塗り重ねることでこの艶が生まれます。
そうして出来上がるのが拭漆技術を駆使した田中氏の山中漆器なのです。
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今回は、幸運にも山中漆器を作る工程について田中氏から教えていただきましたが、他の職人、アーティストの方々にもそれぞれのやり方、世界があります。
是非これをきっかけに、あなたも山中漆器の奥深さに触れる機会となれば幸いです。
木地挽きの工程は⇒コチラ
★☆この取材時の田中 瑛子 氏のYou Tube動画はコチラ☆★